では、ラグは一体どのように作られているのか。その道のりをたどっていきましょう。
まずはウールをコツコツと手で紡ぎ、糸を一本一本作っていきます。ラグを一枚織るための糸を用意するだけでも大変な作業です。丁寧に紡がれた糸は草木などを粉末状にして煮込んだ釜の中に入れられ、じっくりと色を染み込ませていきます。染めの工程を経てようやくラグを織り始めますが、ここからはひたすらに手で糸を結んでいきます。ちなみにラグを制作するときに図面はありません。遊牧民は移動生活の中で目にした風景や家族と共に過ごした時間の中でインスピレーションを得て、頭の中にイメージしたものを頼りに即興で柄や色を決めていくのです。形が出来上がったラグは表裏を焼いて遊び毛を処理し鉄製の鍬を使いながらゴシゴシと洗い、太陽の下で自然乾燥させて縁や毛並みを綺麗に整えてようやく完成します。
遊牧民が生活をより豊かにするために生み出したラグ。今では敷物として浸透していますが、遊牧民は実用的な道具としてラグを使っていました。移動生活でテント暮らしをしていた遊牧民は、硬く冷たい地面にベッドとしてラグを敷いたり布団代わりにしたり、パーテーションのように空間を仕切ったり、食料を入れるための袋として使ったりしていました。生活の知恵から生まれた織物技術は代々受け継がれ、現代を生きる私たちはラグを手にすることができています。